statement
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私たちは無数の感覚器を持つ皮膚膜に包まれ、存在している。
不確かな外の世界とのつながりや目に見えない隔たりに、絶えずジレンマを抱えながら、
微かな気配にも感覚を研ぎ澄まし、感じるさまざまなことを手がかりにして生きている。
自分と外界との壁、境界を形づくっている皮膚。
その上で行われる小さな交信の一つ一つ、感触の一つ一つは、
何より信憑性があり、確かなものだと思う。
私はそこに、目に見えないものへの、信仰とも言えるような、尊さを感じている。
その尊さを形にしたいと思う。
例えば、指先をくすぐるような少し得体のしれない質感の集合体は、
触覚を宙に伸ばし、世界に触れようとする生き物のようなイメージを持っている。
静かに息をしているような生命感を潜ませ、
私たちと同じように周囲の気配を感じ取りながら、そこにいる。
introduction /
私と私ではないものとの境界をかたち作っている皮膚の上で起こる、ざわざわとした刺激と気づき。またそれを手がかりに測り合う他者との間にあるもの。を主題とし、陶に糸や木、ガラス、ウールなどの異素材を掛け合わせる彫刻、インスタレーションを中心に作品を制作している。
それぞれの素材の質感や物理的な特性を利用した造形は、太古の道具や装置、楽器のような印象を与えながら、呼吸をしているような生命感も漂わせる。特に質感に注視し、見る者の触覚を刺激するような制作は、自身が持つ皮膚感覚や手触り、神経伝達に対する関心によるものである。
疾病により身体の皮膚感覚の喪失や神経伝達の障害を長期的に経験し、気配のような目に見えないものすらも感じることができる人間の感覚器とそこで”感じること”が人にとって何よりの拠り所であること、またそれに対して信仰にも似た思いを抱くようになったことが、制作をする上での大きな軸となっている。 / 2023
